オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「ひっく……冬馬、もう春樹が……分かんない……」

抱き寄せた、明香の甘い髪の匂いに、一瞬で理性を失いそうになる。

「……春樹はお前のこと、誰より愛してる」

明香が、涙をいっぱい溜めた瞳で、俺を見上げた。

「……冬馬は?」

「明香……」

「私のことなんか……もう忘れちゃった?」

明香が、俺の頬に触れたのと同時に、大粒の涙が、明香の頬を伝う。

「俺は……」

ーーーー何が正解なんだろう。
明香への想いを消して、なかったことにして、明香の幸せだけを願うのが、本当に正しいのか?

それとも、何もかも捨てて、二人だけでただ一緒にいることを選び、禁忌を犯して、堕ちるとこまで堕ちることが、正しいのか?

「私、やっぱり……冬馬が忘れられない」

子供みたいに泣き出した明香を、俺は、強く抱きしめた。

「泣くな。……連れ去りたくなるだろ」

「どっか、連れて行って……」

このまま、堕ちるとこまで堕ちてしまいたい。

明香しかいらない。明香しか欲しくない。明香の全てを、全身の細胞が求めてやまない。狂おしいほどに。

ーーーー愛してる。

言葉に出せば、すぐに堕ちるんだろう。一度堕ちたら、もう二度と這いだせない深淵の奥深くに。

明香が、泣き止むのを待ってから、俺はゆっくり身体を、離した。

明香の頬に伝う涙をそっと拭ってやる。

「……もう、戻れないだろ」

明香には春樹がいる。俺にも芽衣がいる。

二人でどこか遠くへ行ってしまうには、もう遅すぎた。

ーーーー俺達は選んだのだから、兄妹として生きる事に。
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