オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「俺たちは、……兄妹だから……」

明香の大きな黒い瞳は、暫く俺の瞳だけを映していた。俺も明香だけを瞳に映す。

「……いつか全部……忘れられるのかな……」

「……忘れなきゃな……幸せになる為に」

「忘れられなかったら?」

「明香……」

明香は、俺から視線を外さない。どのくらい見つめ合っていただろうか。

薄く開けた窓から、降り出した雪が舞い込んでくる。

「もう……終わったことだから」

明香は、俺のシャツの上から心臓に触れた。俺の心を見透かすように。

俺は、明香の手首を持つと、そっと離した。

儚い雪と同じだ。明香には、触れられない。触れたらダメだ。

互いの熱で、あっという間に理性など消えて、ただ愛おしい心を抱きしめ合って、堕ちるのみだ。

もう、今度こそ、解けて溶けて、堕ちて、後戻りはできなくなるから。

「……暗くなる前に山下さんとこ、行こう」

俺は、頷いて溢れた明香の涙を、指先で拭ってやると、明香の視線から目を逸らしてシートベルトを締めた。カチャリと無機質な音が、車内に響く。

自分の(あふ)れかけた心ごと鍵をかけて、閉じ込めて、締め付けるように。
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