オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「明香っ……」
明香にかけ直すが、電波が入ってないと無機質な音声が流れてくる。恐らくスマホの電源を落としたんだろう。
一方的に電話も切られたのも、明香が、俺に対してあんなに、感情的になったのも初めてだ。
それだけ、明香は、俺に嘘を吐かれたことが、悲しかったということだ。
冬馬と明香が互いの想いを、俺に隠していたことを知った時の絶望と悲しみを知っている癖に、自分の欲のためだけに、明香に嘘を吐いた。
親の愛情を知らない明香が、どれ程、親というものに憧れていたのか、欲しがっていたのか、そばで見て知っていたのに。
俺と冬馬で、明香が親がいなくても寂しくないように、泣かないように、いつだって明香を守ってきた。
でもいつか、明香の父親を探してやりたいと、一度だけ、冬馬と話したことがあった。
遠いそんな昔の話を、俺と同じタイミングで、冬馬が、山下賢一のことを、調べてるなんて、夢にも思わなかった。
デスクの上から、雪だるまを、囲んで笑う3つの笑顔が、スマホを握りしめたまま、膝をついた俺を見下ろしている。
「俺は……明香のことを……」
ーーーー愛してる。
狂おしいほどに、誰にも渡したくない。渡せない。明香だけは、どうしても譲れない。
例え、それが、大切な血を分けた弟だったとしても。