オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
春樹の今後の説明を一通り、聞き終わると、幸之助と未央は一度会社へ戻って行った。

俺は、駐車場で、明香にラインを送ると、車で、煙草を蒸していた。

空はいつのまにか、夕焼けに染まっている。まだ陽が落ちるのは早い。あっという間に月が昇るのだろう。  

スマホを開けば、芽衣からの着信と、ラインが入っていた。   

『冬馬、帰ってくる?』

俺は、一度帰って、芽衣を、ベットに寝かせてまたすぐ出て行ったんだ。芽衣が目覚めて、俺が居ないことに、不安になるのは当たり前だ。

『春樹が倒れて、病院行ってた。詳しくは帰ったら、話すから』

いつものように、返事はすぐにくる。 

『大変な時に連絡してごめんなさい。無理しなくていいからね』

それ、お前だろ、と思わず言葉に出しそうになった。

俺はやっぱり、芽衣をスマホの画面に表示すると、電話をかけた。悩んだのか、何コールかたってから芽衣の声が聞こえて来る。 

『……もしもし』

「芽衣?」

『うん……ごめんね、色々大変なのに……』 

「……また泣いてたのか?」

芽衣からの返事はない。おそらく泣いてた筈だ。声が少し震えてるから。

俺が、昨日、明香と、どう夜を過ごしたのか、俺から何を言われるのか、多分、芽衣は分かってる。 

「芽衣?」

『今日も帰れないよね、私は全然大丈夫だから、春樹さんと明香さんについててあげてね』

いつもの明るい芽衣の声。それをそのまま受け取っていた自分は馬鹿だ。

「帰るよ……遅くなるかもだけど、芽衣の待ってる家に帰るから……」

幸之助の言葉を思い出す。 
 

ーーーー自分には、俺を幸せにできないと婚姻届を出さなかった芽衣……。

『……分かった……待ってるね』 

「……ごめんな……待たせてばっかだな」

『……きて……』

「え?……芽衣?」

俺は聞き返していた。芽衣の本音が聞こえた気がして。 

『冬馬……はやく……帰ってきて……』

こうやって、俺に連絡しながら、芽衣は何度泣いてたんだろうか。誰よりも寂しがり屋の芽衣に、何度、一人の時間を過ごさせたのだろうか。

「……俺帰るまで、一人で……泣くなよ」 

せめて芽衣が一人で泣かないように、なるべく早く家に帰ろう。それが今、俺が芽衣にできる唯一のことだから。
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