オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
病院を出て、10分ほど車を走らせた時だった。少しずつ、また胃の奥がムカムカとして気分が悪い。

(未央さんの言ってたとおりだ……)

「ごめ……冬馬、車停めてくれる?」 

「え?」

冬馬は、ちょうど見えた公園の端に、車を停めた。私はすぐに、車から降りて、排水溝に向かって、胃液を吐き出した。 

「明香っ」

慌てて冬馬が、車から下りてきて、背中を摩ってくれる。

「さっきも明香、具合が悪そうだったよな?
大丈夫か?」

冬馬が、私の額に触れて、難しい顔をした。

「少しだけ熱いかな?」

冬馬のクセだ。小さい頃から、私が熱を出すたびに、私の額に触れながら、自分の額にも手を当てて、温度差を確かめるように難しい顔をする。

小さな頃と何一つ変わらない。こうやっていつも守ってくれた。側に居てくれた。

そんなことを考えていたら、不思議と吐き気はすっと治まってくる。

「冬馬、ありがとう……大丈夫だよ」

「いや、帰り道に、内科寄るから」

冬馬が、私の背中に手を置いて、手首を持つと、私ごと引っ張りあげるようにして立ち上がった。

ふわりと鼻を掠める冬馬の匂いに、涙が出そうになる。 

「……病気じゃないから」 

「え?」

冬馬の切長の瞳が見開かれる。私は冬馬の瞳をちゃんと見つめてから、言葉にした。

「……赤ちゃん……できたの」  

ーーーー冬馬との赤ちゃんじゃない。春樹と私の赤ちゃんだ。

「……そっか……」

冬馬が、驚いたまま、口元を覆った。私に言おうとしてくれたこと、全てを閉じ込めるように。
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