オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「あ、みおちゃん」

未央が俺達を気遣うように、静かに、階段から降りてきた。

「未央……」 

「冬馬、久しぶりね」

「みおちゃんも、こっちこっち」

星香が、未央の手を引いて、春樹の横に座らせると、自分は、春樹の膝の上に乗った。

「星香、2階にオモチャないか見に行こうか」

春樹は、星香を抱き抱えると、二階へと上がって行く。二人が2階へ上がるのを見送ってから、未央が静かに口を開いた。

「……冬馬……ごめんなさい。本当は……春樹が倒れた四年前のあの日、明香さんと、一緒にお医者様の話を聞いて、出産のリスクがかなり高いことを聞いていたの」

未央が、まつ毛を伏せると頭を下げた。

「やめろよ……全部明香が……希望したことなんだろ?」

「でも……本当にこれで良かったのか分からないの。子供さえ諦めていたら……春樹は明香さんと幸せに暮らせたはずだから……私は……春樹が幸せならそれで良かったの……」

ーーーーだから、明香は、四年前、俺にロスに同行させずに、未央に同行を頼んだんだ。

春樹の病状のサポートや相談もあっただろうが、何より、星香を産んで、自分に何かあったとき、リハビリしながら、子供を育てるのは春樹には無理だっただろう。

だから、未央に託した。

春樹の幸せを願う、未央の心に嘘偽りが、ないことを知っていたから。

「……ありがとうな……」

「え?」

「……お前のことだから、何度も明香に聞いただろ。……産まない選択肢を。春樹が明香を誰よりも愛してるのを知っていたから……。それでも、明香は産みたかったんだ、春樹から、沢山もらった愛情に応えたかったんだ」


未央の切長の瞳から、いくつもの雫がこぼれ落ちる。

「だから、お前は罪悪感なんか持たなくていい……星香のことも、大事に育ててくれてありがとうな……」

さっきの、星香を、見ればわかる。未央が、自分をお母さんだと呼ばせずに、名前で呼ばせている事、よく笑う天真爛漫の星香、きっと、我が子のように、愛情を注いで、春樹を支えながら、4年間を過ごしてきたんだろう。
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