オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
春樹の、ベッドに寝転んでいたら、お風呂を終えた春樹が、部屋に入ってくる。

部屋の電気は消されて、春樹が私の横に寝転んだ。

私は、鼓動がはやくなる。さっきの冬馬と私を見て、春樹がどう思ったのか。

今から何を言われるのか、想像だけが、膨らんで不安になる。

「……式早めない?」
「え?」

春樹は、横向きに体勢を変えると、私の目をじっと見て、頬に触れた。

「なんなら明日にでも籍入れたい。明香を、早く俺のものにしたいんだよ」

冗談めかして、春樹は、優しく私の唇に触れる。

ーーーーいつもの春樹と違う。こんな風に強引な話はしないから。でもそれは……。


「明香は?……俺のこと愛してる?」

「春樹……」

「愛してるって言って」

春樹が、私にこんなこと聞くのは初めてだ。
春樹の真剣な眼差しに、私は、心が揺れる。

愛してると言いたい。愛してるのは、春樹じゃなきゃいけない。

「愛してる……」

震えそうな声で答えた私に、春樹が、小さくため息をついた。

「……言わせてるようじゃ、俺も、まだまだガキだよな。ごめん……」

私は、今どんな顔をして、冬馬を想いながら、春樹に愛してると言葉に()いたんだろう。

ーーーーそれなのに、謝るのはいつも春樹だ。

一粒転がった涙は、あっという間に止まらなくなる。苦しくて、水の中で溺れてるみたいだ。

溢れた涙は、春樹が指先で全部掬ってくれる。

「ごめんな、また泣かせた……」

春樹の困った顔を見るたびに、自分が嫌になる。こんなに大切に愛してくれる春樹を、私は、笑顔にしてあげることが、できるんだろうか。

「春樹……私も早く入籍したい」

「冗談だよ、急がなくていい」

心が、痛くて張り裂けそうだ。

「春樹……離さないで……」

冬馬のことを忘れられるように。私の弱い心が、冬馬のところへいかないように。捕まえて離さないで。

狡くてもいい、春樹だけを見つめていないと、もう心が壊れてしまいそうだから。


「離さない、誰にも渡さないから……。だから泣くなよ。ずっと……側にいるから」

春樹は、涙ごとキスで攫うと、私の背中を、摩った。小さい頃、泣くたびに、冬馬と春樹がこうやって摩ってくれた。

どうして、子供のままじゃいられないんだろう。 

「好きだよ」

重ねられた唇はあったかくて、春樹の背中に私は腕を回した。何度キスをすれば、私の心も身体も春樹でいっぱいになるだろう。

何度、抱かれれば、冬馬のぬくもりを忘れてしまえるだろうか。

じんわりと伝染していく春樹の温もりに、私は身を任せた。
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