オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
明香が、眠りについてからも、俺はしばらく眠れなかった。

さっき見た明香と冬馬の姿が、頭から離れなくて。

明香は眩暈がして、お皿を割った自分を冬馬が心配してくれたと話したが、あの時の2人は、兄妹の雰囲気では、とてもなかった。

冬馬の、明香に触れた掌と視線は、まるで好きな女にむける、それに酷似していたのは俺の気のせいだろうか。

冬馬の女性関係は、昔から派手だったが、冬馬のあんな顔を見るのは初めてだった。

気のせいであって欲しい。

ただ、そう思う以上に、俺の二人への疑惑は膨れ上がるばかりだった。

あの明香の鎖骨につけられたキスマークは、冬馬じゃないだろうか。


リリリン、リリリリンーーーー

不意に、スマホが着信を告げる。俺のスマホじゃない、明香のスマホだ。

液晶画面を確認すると、俺は、すぐにタップした。

「もしもし」

明香だと思った相手は、少し驚いたようだった。

「……あ、えっと春樹君?」

「あぁ、奈々ちゃん久しぶり。篤も元気?」

「元気だよ、もうイビキかいて寝てるけど」

「明香もだよ、あ、イビキはかいてないけどね」

僅かに間があって、奈々が恐る恐る訊ねた。

「あのー……お邪魔しちゃいました?」
「いや、大丈夫だよ」

思わずクスッと笑った俺に、よかったと小さく奈々が呟いた。

「この間、俺は行けなくて残念だったけど、明香、凄く喜んでたよ。ありがとうね」

「あ、いえ、こちらこそ、久しぶりに会えて、嬉しかったです」

「冬馬も家でたし、またいつでも遊びにきてね」

「え?冬馬家出たんですか?」

奈々は、何故か大学の時から、冬馬を呼び捨てにする。

「冬馬も急に結婚決まってね、頭取のお嬢さんと」
「そうなんですね……」

奈々のトーンが、下がったのは、政略結婚だと気づいているからだろう。

「あっ、奈々ちゃん、同窓会の時、冬馬と明香、一緒の部屋だった?」

聞いてはいけないとわかってる。開けてはいけないパンドラの箱だ。

それでも、もう俺は、聞かずにはいられなかった。
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