オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
俺は、冷蔵庫を眺めながら、いつも交代で作っていた三人分の料理の材料が、頭を掠める。

もうこれからは一人分でいいのに。一人で食べると思うと作る気も起こらないし、一人で食べるのは侘しい。

芽衣が、俺の部屋に入り浸るのも、いつも食事を、二人分作るのも、そういう理由なんだろう。

芽衣は寂しがり屋だ。

初めは大事に大事に育てられたワガママなお嬢様かと思っていたが、後妻のこともあり、家を嫌う。

ずっと一人で寂しさを堪えながら、孤独だったんだろう。でもそんなこと微塵も感じさせない位に、芽衣は辛い時ほど笑おうとする。

テーブルに味噌汁と、おにぎりと、目玉焼きを置くと、芽衣が、俺の横にちょこんと座った。

「わぁ、美味しそう」

「多分、料理は芽衣のが上手いけどな」

二人で手を合わせて、いただきます、をしてから食べ始める。

「冬馬、目玉焼き、両面なんだね、覚えとく」

芽衣がおにぎりを頬張りながら、こちらを向いて、にこりと笑った。

「ガキ」
クククと笑った俺を芽衣が睨んだ。

「なんで?何にもしてないのに」

人差し指で、芽衣のほっぺたの米粒を摘んで取ってやる。芽衣が真っ赤になった。

「……冬馬ズルい」

「何が?」 

「女慣れしてるから」

さらに、ぷっと笑った俺をみて、芽衣がますます頬を膨らませた。

「何だそれ、何?キスで取ってやった方が良かった?」

「そんな事言ってない!」

芽衣は俺から視線を外すと、目玉焼きを食べ始める。

「……早く大人になりたい……」

ぼそりと呟いた芽衣の頭を、俺はコツンと突いた。明香によくするように。

「別に……芽衣は、そのまんまでいいと俺は思うけど?」

「やだ。そのうち、冬馬が、押し倒したくなるくらいの色気が欲しい」

「あっそ、色気ねー……」

唇を持ち上げた俺をみながら、芽衣は、真新しい黄色のマグカップを片手に、俺の足をテーブルの下から蹴った。
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