13歩よりも近い距離
「ねえ、すず」
「うん?」
「明日から五日間くらい休みっしょ?」
「そうだよ。とうとう岳、一ヶ月間も不登校になっちゃうね」
この前岳には十袋もあげたのだからいいだろうと、私は彼の許可も得ずに飴を一粒開封し、口へ入れた。ころんと舌で転がせば、しょっぱいのにどこか甘い、不思議な味がした。
「その五日間、俺の部屋で寝泊まりしてよ。同居ってやつ」
その瞬間、口の中からぽーんとその飴が飛んでいく。弧を描いて壁に当たって、床を少し這って揺れて止まる。一部始終を見届けたところで、パニックに陥った。
「な!なに言ってんの岳!気でも狂った!?」
バシンッと岳の頭を引っ叩き、「ばかあほバカアホ」と罵るけれど、彼は首と人差し指を横に振る。
「狂ってなんかないよ。ただすずと近い距離にいたいだけ。もう母さんの許可取ってあるし、あとはすずの親が頷けば決定だから」
「は、はあ!?おばさん、オッケーしたの!?」
「おう。だからすずも、帰って親に聞いてみてよ。んで許可取れたら、今夜から同居スタート」
「そんなの許可するわけないじゃん!い、いくら幼馴染だっていっても、もう中学生の男女だよ!?」
岳に大声を浴びせていると、彼は「あ」と指を止め、それでそのまま私をさした。
「今、俺のこと男扱いしたべ。やっぱり効いてんじゃん、この前のキス」
その言葉で、カーッと顔が熱くなる。
「し、してないし!このバカ岳!岳なんか空気同然なんだから!」
親の許可など下りぬだろうと思った私は、必死に平然を装いながら、「オッケーだったら即行来てやるよっ」だなんて岳に言い捨てて、彼の部屋を後にした。
外へ出ても未だぽっぽと熱を帯びる頬は、夏にも似た気候のせいだ。
「うん?」
「明日から五日間くらい休みっしょ?」
「そうだよ。とうとう岳、一ヶ月間も不登校になっちゃうね」
この前岳には十袋もあげたのだからいいだろうと、私は彼の許可も得ずに飴を一粒開封し、口へ入れた。ころんと舌で転がせば、しょっぱいのにどこか甘い、不思議な味がした。
「その五日間、俺の部屋で寝泊まりしてよ。同居ってやつ」
その瞬間、口の中からぽーんとその飴が飛んでいく。弧を描いて壁に当たって、床を少し這って揺れて止まる。一部始終を見届けたところで、パニックに陥った。
「な!なに言ってんの岳!気でも狂った!?」
バシンッと岳の頭を引っ叩き、「ばかあほバカアホ」と罵るけれど、彼は首と人差し指を横に振る。
「狂ってなんかないよ。ただすずと近い距離にいたいだけ。もう母さんの許可取ってあるし、あとはすずの親が頷けば決定だから」
「は、はあ!?おばさん、オッケーしたの!?」
「おう。だからすずも、帰って親に聞いてみてよ。んで許可取れたら、今夜から同居スタート」
「そんなの許可するわけないじゃん!い、いくら幼馴染だっていっても、もう中学生の男女だよ!?」
岳に大声を浴びせていると、彼は「あ」と指を止め、それでそのまま私をさした。
「今、俺のこと男扱いしたべ。やっぱり効いてんじゃん、この前のキス」
その言葉で、カーッと顔が熱くなる。
「し、してないし!このバカ岳!岳なんか空気同然なんだから!」
親の許可など下りぬだろうと思った私は、必死に平然を装いながら、「オッケーだったら即行来てやるよっ」だなんて岳に言い捨てて、彼の部屋を後にした。
外へ出ても未だぽっぽと熱を帯びる頬は、夏にも似た気候のせいだ。