13歩よりも近い距離
 ころんころん。ころんころん。

 ソルト味の唇がゆっくり離れたかと思ったら、岳は近距離を保ったまま飴を舐めていた。額をこつんと付けられる。

「これで、俺は男になれた?」

 岳のその言葉で、ゾワッと全身毛羽立った。手だけでも離したいけれど、しっかりぎゅっと握られている。身体も力も、岳が上。

「俺と付き合って、すず」

 もう幾度となく聞いたこの定型文。この文章には、私もこんなテンプレートでいつも返す。

「岳とは付き合わないってば」
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