13歩よりも近い距離
 翌日の空も青かった。木漏れ日を十三回踏んで岳を呼ぶ。

「岳ーっ!今日こそ学校行くよーっ」

 昨日のことは気に留めない。忘れられるわけではないが、気にしちゃいけない。

「がっくちゃーんっ。すずたんと一緒に学校行こうよーっ」

 今日は静かに窓が開く。のっそり顔出す半目の岳。

「なんなん、お前……」
関川(せきかわ)すずでーす」
「名前聞いてんじゃねえよっ。なんでそんな普通にしていられんだよっ」
「だって、幼馴染だから」

 幼馴染、という単語が気に食わなかったのか、岳は大きな舌打ちをした。窓枠で頬杖をつき、私を伏し目で見下ろす彼。

「昨日のこと、なっんも響いてねえの……?」
「うん」
「俺、まだそのカテゴリーから出られてねえの?」
「うん」
「まじうっぜー」

 ボサボサの頭を掻いて、さらに爆発させて、岳は言う。

「んじゃ、がっこ行かね」
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