あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「たいくんと両想いになりたかった……」

 ポツンとつぶやいたと同時、ピューレを舐め終えた猫が、「にゃ」と不愛想に一声お礼鳴きをして、繁みの奥に走り去っていってしまった。

「あ、……待っ――」

 ひとりにされるのがイヤで思わず手を伸ばしたら、ずっとしゃがんでいて足がしびれたからか、バランスを崩して地べたに這いつくばる形になって……。折悪しく足の下に(とん)がった小石があって、ひざにそれが刺さってしまう。

「痛っ」

 猫のお陰でほんの少し上がりかけていた気持ちが、一気にしぼんで、自分は猫にも見放されてしまうような女なんだと思ったら、止まっていたはずの涙が復活して……ポツポツと地面に小さなシミを作った。

 ――きっと、誰かの幸せを奪い取るような変な願い事をしてしまったから……(あの子)にも見切りを付けられてしまったんだ。

 猫がそこまで考えているはずはないと、頭の片隅では分かっているのに、どんどん悪い方向に気持ちが向かってしまう。

(立ち上がらなきゃ……)

 いつまでもこんな情けない格好のままでいるから、そんな不毛なことを考えてしまうんだ。そう思うのに、身体を起こせないまま身動き出来ずにいたら、
「ねぇキミ。暗くなってきてるのに……女の子がこんな人通りの少ないところに一人で居たら危ないよ? ――もしかして……気分でも悪いの?」
 突然背後から柔らかな声が降ってきて、杏子(あんず)はノロノロと振り返った。


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