あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 何の迷いもなくきっぱりと言い切られた大葉(たいよう)の言葉に、羽理(うり)は胸の奥の柔らかな部分をそっと優しく抱きしめられた気がして、ポロリと涙をこぼした。

「ちょっ、何で泣くんだっ」

 今まであごに添えられていた大葉(たいよう)の手が、慌てたように……だけど何の迷いもなく羽理の頬を伝う涙をぬぐってくれる。

 そのことにも胸がぽぅっと温かくなって、羽理は大葉(たいよう)を泣き濡れた瞳のまま見上げた。

「私、大葉(たいよう)と家族になりたい……」

 本心から出た羽理の言葉に、大葉(たいよう)がギュッと羽理を腕の中に抱き締めてくれる。

「バーカ。俺は元よりお前以外との結婚なんて考えられねぇよ」

 柔らかく微笑む大葉(たいよう)の顔を見上げて、羽理は今更のように、大葉(たいよう)との結婚を意識した。


***


 不動産屋巡りのついでにマリッジリングを見に行こうと言われた羽理(うり)は、「え? エンゲージではないんですか?」とキョトンとする。

 羽理に言われて自分のおかし気な言動に思い至ったんだろうか。決まり悪そうに視線を揺らせた大葉(たいよう)が、「も、もちろん! それはそれとして買うつもりだが……その、つ、付けるのはマリッジの方にしろ!」と言い切ってますます羽理を困惑させる。

 そんな大葉(たいよう)の言動を、「意味が分かりません!」と一蹴(いっしゅう)した羽理だったのだが。
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