あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「何で会社じゃなくて社長のご自宅なんでしょう?」

 呼び出し先が社長室でも一介の平社員に過ぎない自分には十分プレッシャーなのに……と瞳を揺らせながら、羽理(うり)が普通なら縁なんてない社長宅に呼び出されたことを不審に思って落ち着かないのだと眉根を寄せた。

 疑問符満載ではあるものの、待ち合わせの時刻もある。納得のいかない様子で恵介伯父の家へ向かう支度をしながら、羽理がソワソワと大葉(たいよう)を見つめてくるから。

 大葉(たいよう)はそんな彼女の頭をポンポンとやわらかく撫でると、「《《親族として》》なんか話したいことがあるからじゃねぇかな?」と小さく吐息を落とした。

「親族として……」

 大葉(たいよう)の言葉を吟味するみたいに舌の上で転がした羽理が、
「だったら……大葉(たいよう)のご両親がいらっしゃる屋久蓑家(やくみのけ)で、の方が良かったんじゃないですかね?」
 そりゃそうだよな? という至極真っ当な質問を投げかけてくる。

 親族、と言っても恵介は所詮伯父なのだ。両親が健在で……なおかつ彼らとの関係も良好な(おい)っ子の結婚に関して、伯父が単独で何か言ってくるのはちょっぴりおかしい。会社絡みの話というならばまだしも……と羽理が思ったのも無理はないだろう。

 そんな羽理に、大葉(たいよう)は観念したように「恵介伯父さん、今、うちの実家、出禁くらってるから」と白状した。
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