あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 いまさら杏子(あんず)岳斗(がくと)から離れたからといって、彼女らがすんなり立ち去るとは思えなかったけれど、少なくとも現状のままよりは非難の矛先が自分に戻ってくるだけマシだろう。

 だが、岳斗は杏子の言葉を黙殺すると、「何の根拠があってそんなことを言うの? 仮にも君たちは彼女の同僚だよね? 僕よりずっと長く一緒にいるはずなのに見る目がないのはどっち? 少なくとも僕は彼女のことをとても誠実で素敵な女性(ひと)だと思ってるんだけど?」と三人に問い掛ける。

 岳斗に顔向け出来なくてオロオロと震える杏子を支える岳斗の腕は、何の迷いもないみたいにガッチリと杏子を包み込んで離さない。

 杏子はこれ以上安井たちから岳斗に酷い言葉を投げ掛けられたくなくて、消え入りたい気持ちになった。

 どうせ三人は、笹尾とのことを持ち出して、杏子が如何にしたたかな女かを説明するはずだ。それが事実とはかけ離れた情報だとしても、彼女らにしてみれば、笹尾から聞かされた話こそが真実なのだから容赦はないだろう。

 そんな杏子を擁護(ようご)し続ければ、きっと岳斗だって攻撃対象にされてしまう。

「岳斗さん、私……一人でも大丈夫なので」

 それで懸命に岳斗へ語り掛けたのだけれど……。
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