あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(こういうのは本来、僕がすべきことじゃないんだけどね)

 通常ならこういう采配(さいはい)は社長自らがふるうべきだ。だが、恐らく彼は今、岳斗(じぶん)への遠慮も手伝ってそういうことが出来ずにいるんだろう。

(それに……実情を知らない社長じゃ、この中から誰を残して誰を立ち去らせるべきか、判断がつかない)

 そう判断した岳斗は、社長の了承も得られた、ということでそのまま話を続けさせてもらうことにした。

「今から僕が名前を呼んだ方だけ残って頂けますか? 呼ばれなかった方々は……とりあえず今回に限っては〝何もお(とが)めなし〟ということで持ち場へお戻りください」

(この場で皆に断罪の全ては見せないけど、無傷のままここから姿を消させてあげるほど僕がお人好しだとは思わないでね?)

 きっとここまで言えば、名前を呼ばれた人間はすべからく〝制裁対象と断定された側〟だとこの場にいる全員へ伝わるはずだ。それを見越した上でわざとそういう言い方をした岳斗である。ついでに他の面々についても、今回に限って《《は》》と牽制(けんせい)することも忘れなかった。

 繋いだままの杏子(あんず)の手を握る手に気持ち力を込めると、岳斗は心の中で酷薄な笑みを浮かべる。

(僕の大事な杏子ちゃんを傷付けたこと、必ず後悔させてあげる)

 そうして岳斗は、営業課の笹尾(ささお)志波(しば)、経理課の中村経理課長、安井、古田、木坂の六名の名を声高に宣言した。


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