あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
45.今はまだ返事をしないで?
 荒木(あらき)羽理(うり)から一点の迷いもない視線でじっと見詰められた土井恵介は、ほぅっと吐息を落とした。

「たいちゃんの未来のお嫁さんも公認なら僕に止めることはできないね」

 どこかおどけたように伯父の顔で淡く微笑んでから、恵介は続けた。

「先日はたいちゃんのお見合い相手に僕がいらないことを言ったせいで荒木さんにも色々気をもませたみたいだね。本当に申し訳なかった」

 素直にスッと頭を下げた途端、目の前で荒木羽理がアワアワし始める。

「しゃ、社長にそんなっ。頭を下げるとか……お、落ち着かないのでやめてくださいっ」

 非常に恐縮した様子で慌てまくっていたくせに、ふと思い出したように「あの……社長。私は大丈夫なので、今度、ちゃんと機会を作って美住(みすみ)さんに謝罪して欲しいのです。社長の言動に振り回されて一番傷付いたのは美住さんだと思うので」

 ピシッとした様子でじっと自分を見詰めてくる荒木羽理に、恵介は内心感心する。

「分かったよ。ちゃんと杏子(あんず)ちゃんにも謝ると誓う」

 言って、愛し気にすぐ横の恋人を見詰める甥っ子に視線を移すと、恵介はふっと表情を(やわ)らげた。

「たいちゃん、いいお嫁さん候補を見つけたね」


***


 恵介伯父から羽理(うり)のことを褒められた大葉(たいよう)は、自分のすぐそばで「そ、そんなっ。有難うございますっ」と恐縮しまくる羽理の手をギュッと握ると「はい。可愛くて美人で面白くてしっかりした、俺の自慢の婚約者(フィアンセ)です」と宣言した。
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