深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
恭也がパソコンを閉じて、カバンを片付けるまで何を頼むか迷っていた。

「さやか、何か食べる?」
「うん、食べてもいい?」
「もちろん。俺もお腹空いてるから食べるよ」

私は彼にメニュー表を向けた。

「俺はハヤシライスにするよ」
「私も同じ」
「意見が合ったな」
「そうね」

私たちは揃って、口を緩ませた。とてもこれから別れ話をするようには、見えないやり取りだ。

それが注文してからは、深刻な表情に変わった。先に口を開いたのは、恭也だった。

「ビックリしたんだけど、どういうこと? 部屋には、さやかの物がなくなっているし」
「あ、部屋を見たんだね」
「信じられなかったから、いるんじゃないかと先に確認したよ」
「うん、そうか……」

私はテーブルに視線を落としてから、水をひと口飲んだ。

「説明してくれる? どうして、あんなことを言ってきたの? 俺たち、何も問題なかったよな?」
「問題は……あったよ」
「どんな?」
「恭也が私との交際を反対されるという問題……」

答える声が徐々に小さくなっていく。

頑張るんだ、私。高林さんが応援してくれたのだから……。
< 82 / 176 >

この作品をシェア

pagetop