原田くんの赤信号
包装グッズ専門店。
バレンタインデーを来週末に控えた今日は、大勢の女性客で賑わっていた。
「原田くんしか、男性いないよ」
「お、おう……」
「出口で待ってれば?」
「いや……いい。瑠美と一緒に行く」
繋いだ手にぎゅっと力をこめると、原田くんは勇んで入店した。
目移りするほどの品数に、わたしたちふたりは何に触れることもなく、店内を一周して出入り口に舞い戻る。
「いいのあった?」
「え。えーっとわかんない……」
「もう一回見てみるか」
「う、うんっ」
そしてもう一周。またもやぐるっとまわるだけ。
「どれがいい?」
「わかんない……」
「おい」
「だって、わかんないんだもんっ」
原田くんが嘘をついていないとして、福井くんは緑が好きだ。しかしひとことに緑と言っても、色々な緑がある。
濃い緑色にエメラルドグリーン。カーキ色に黄緑色。なんだか水色ですら、薄い緑色に見えてきた。
「も、もう一回っ」
「今度はちゃんと選べよ」
「選んでる!」
繋いだ手にぎゅっと力をこめたのは、次はわたしの番だった。
バレンタインデーを来週末に控えた今日は、大勢の女性客で賑わっていた。
「原田くんしか、男性いないよ」
「お、おう……」
「出口で待ってれば?」
「いや……いい。瑠美と一緒に行く」
繋いだ手にぎゅっと力をこめると、原田くんは勇んで入店した。
目移りするほどの品数に、わたしたちふたりは何に触れることもなく、店内を一周して出入り口に舞い戻る。
「いいのあった?」
「え。えーっとわかんない……」
「もう一回見てみるか」
「う、うんっ」
そしてもう一周。またもやぐるっとまわるだけ。
「どれがいい?」
「わかんない……」
「おい」
「だって、わかんないんだもんっ」
原田くんが嘘をついていないとして、福井くんは緑が好きだ。しかしひとことに緑と言っても、色々な緑がある。
濃い緑色にエメラルドグリーン。カーキ色に黄緑色。なんだか水色ですら、薄い緑色に見えてきた。
「も、もう一回っ」
「今度はちゃんと選べよ」
「選んでる!」
繋いだ手にぎゅっと力をこめたのは、次はわたしの番だった。