原田くんの赤信号
「原田くんは、赤が好きなの?」
三周目に差しかかったところで、わたしは聞いた。
「え、俺?」
「前に公園でアイス食べた時も赤のコートだったし、今日も赤い帽子被ってるし」
「あー本当だ。たしかに赤色の物、俺けっこう持ってるかも」
「それは好きだからでしょ?」
「いや、無意識だった。ひょっとしたら好きなのかもな」
「なにそれー」とわたしが笑うと、原田くんも「知らなかった、俺って赤好きだったのか」と笑っていた。
「でもさ。俺思うんだけど」
「うん?」
やっと手に取った、小さな星が散りばめられたエメラルドグリーン色の包装紙を眺めていると、隣で原田くんが言う。
「なんとなく欠かせないものが、本当に好きなものなんだろうな」
「欠かせない?」
「そ。人生に欠かせないもの」
人生に欠かせないもの。これはまた唐突に、深い話を。
「そうだねえー」
わたしは今、やっと福井くんに似合う包装紙を発見できたのだから、こっちに集中したい。だから雑な相槌を打った。
その隣で、原田くんは続ける。
「俺の人生にはさ、たぶん赤色って欠かせないんだ。赤が身近にあると、ヤル気がでたりテンションがあがったりするんだよ。だから無意識に、赤色を選んでるんだと思う」
「ふぅーん」
「好きだとは気付いてなかったけど、好きって意味だよな、これって」
「ふぅーん」
「そう思わない?」
「うーん」
「おい瑠美、聞いてる?」
エメラルドグリーン一色だった視界にぬっと映り込むは、赤いキャップと原田くんのむくれ顔。
「え、ああ聞いてる聞いてる」
「嘘こけ」
「ほんとほんと、聞いてたよ。原田くんは、赤色が好きだって話でしょう?」
グリーンの包装紙のその横で、たまたま目に入った赤色の包装紙を手に取って、わたしは原田くんの服に重ねてみた。
「なんだよ」
「いいからじっとしてて」
「はあ?」
原田くん、赤。原田くん、赤。うん、いい感じ。
「あはは、すごく合ってる。原田くんは赤が一番似合うね」
心底そう思った。
三周目に差しかかったところで、わたしは聞いた。
「え、俺?」
「前に公園でアイス食べた時も赤のコートだったし、今日も赤い帽子被ってるし」
「あー本当だ。たしかに赤色の物、俺けっこう持ってるかも」
「それは好きだからでしょ?」
「いや、無意識だった。ひょっとしたら好きなのかもな」
「なにそれー」とわたしが笑うと、原田くんも「知らなかった、俺って赤好きだったのか」と笑っていた。
「でもさ。俺思うんだけど」
「うん?」
やっと手に取った、小さな星が散りばめられたエメラルドグリーン色の包装紙を眺めていると、隣で原田くんが言う。
「なんとなく欠かせないものが、本当に好きなものなんだろうな」
「欠かせない?」
「そ。人生に欠かせないもの」
人生に欠かせないもの。これはまた唐突に、深い話を。
「そうだねえー」
わたしは今、やっと福井くんに似合う包装紙を発見できたのだから、こっちに集中したい。だから雑な相槌を打った。
その隣で、原田くんは続ける。
「俺の人生にはさ、たぶん赤色って欠かせないんだ。赤が身近にあると、ヤル気がでたりテンションがあがったりするんだよ。だから無意識に、赤色を選んでるんだと思う」
「ふぅーん」
「好きだとは気付いてなかったけど、好きって意味だよな、これって」
「ふぅーん」
「そう思わない?」
「うーん」
「おい瑠美、聞いてる?」
エメラルドグリーン一色だった視界にぬっと映り込むは、赤いキャップと原田くんのむくれ顔。
「え、ああ聞いてる聞いてる」
「嘘こけ」
「ほんとほんと、聞いてたよ。原田くんは、赤色が好きだって話でしょう?」
グリーンの包装紙のその横で、たまたま目に入った赤色の包装紙を手に取って、わたしは原田くんの服に重ねてみた。
「なんだよ」
「いいからじっとしてて」
「はあ?」
原田くん、赤。原田くん、赤。うん、いい感じ。
「あはは、すごく合ってる。原田くんは赤が一番似合うね」
心底そう思った。