原田くんの赤信号
「落ちたけど」
「あ、ああ……」
「画面割れてない?大丈夫?」
「お、おう」
長いこと固まっていた原田くんは、わたしの言葉でようやく動く。
原田くんは変な人だ。「どうしてすぐ拾わないの?」などと、ツッコむのもやめよう。
「そんなにバレーが上手なら、福井くんの将来は、プロバレーボール選手かなあっ」
福井くんの容姿を想像することで、わたしは不可思議に思う気持ちを紛らわせようとした。
ブロックを決める福井くん。うん、カッコいい。
けれど以前のようにわたしの目がハートになりきれないのは、どうしてだろうか。
「将来?」
妄想にふけていると、原田くんが聞いてきた。
「福井の将来なんか、まだわかんないじゃん」
「でもあれだけ背ぇ高いんだよ?それでもってバレーが上手ときたら、将来はプロの選手になった方がいいと思わない?」
「どうでもいいよ、そんなん」
将来の話が嫌なのか、福井くんを語るわたしが嫌なのか、またもやななめ下に傾いていく原田くんのご機嫌。
もう食す物がない彼は、セットで頼んだ炭酸水をちゅうと吸っていた。
「原田くんは、将来なにになりたいの?」
「ゲホッ」
そしてどこかの気管に入ったらしく、すぐむせた。
胸をドンドンと叩いて息を整えた原田くんは、「そんなもんねえよ」と言い放つ。
「え、ないの?将来の夢」
「ないない、そんなもんねえ」
「ふうん。わたしはあるよ」
「え……?」
「お嫁さん。素朴な夢かもしれないけど、大人になったら大好きな人のお嫁さんになりたいっ」
わたしがそう言い切ると、今度の原田くんは豪快に、まだ半分は残っていた炭酸水を床にぶちまけた。
「あ、ああ……」
「画面割れてない?大丈夫?」
「お、おう」
長いこと固まっていた原田くんは、わたしの言葉でようやく動く。
原田くんは変な人だ。「どうしてすぐ拾わないの?」などと、ツッコむのもやめよう。
「そんなにバレーが上手なら、福井くんの将来は、プロバレーボール選手かなあっ」
福井くんの容姿を想像することで、わたしは不可思議に思う気持ちを紛らわせようとした。
ブロックを決める福井くん。うん、カッコいい。
けれど以前のようにわたしの目がハートになりきれないのは、どうしてだろうか。
「将来?」
妄想にふけていると、原田くんが聞いてきた。
「福井の将来なんか、まだわかんないじゃん」
「でもあれだけ背ぇ高いんだよ?それでもってバレーが上手ときたら、将来はプロの選手になった方がいいと思わない?」
「どうでもいいよ、そんなん」
将来の話が嫌なのか、福井くんを語るわたしが嫌なのか、またもやななめ下に傾いていく原田くんのご機嫌。
もう食す物がない彼は、セットで頼んだ炭酸水をちゅうと吸っていた。
「原田くんは、将来なにになりたいの?」
「ゲホッ」
そしてどこかの気管に入ったらしく、すぐむせた。
胸をドンドンと叩いて息を整えた原田くんは、「そんなもんねえよ」と言い放つ。
「え、ないの?将来の夢」
「ないない、そんなもんねえ」
「ふうん。わたしはあるよ」
「え……?」
「お嫁さん。素朴な夢かもしれないけど、大人になったら大好きな人のお嫁さんになりたいっ」
わたしがそう言い切ると、今度の原田くんは豪快に、まだ半分は残っていた炭酸水を床にぶちまけた。