21トリソミー
「……ゴメン。何か、疲れちゃった。もう寝る」

 これ以上話しても承服は難しいと判断し、この場から退散しようとソファから立ち上がる。

「先にお風呂に入りなさい。その間にお布団用意しておくから」

 母も腰を上げた。

 結婚して家を出てから、私の部屋は残っているが、誰も使わなくなったベッドの布団は、普段は当然片づけられている。この家の人間ではなくなった私に、布団の在り処は分からない。

「いいよ。自分でやる。布団、どこにしまってあるの?」

「いいから。アナタは妊……家を出た人間は娘であってもお客様。おもてなしされてればいいのよ」

 中絶を勧められている私を妊婦扱いするのは違うと思ったのだろう。

『アナタは妊婦なんだから』と言い掛けた母が、ハッとした表情をした後に、とても悲しそうに顔を歪めながら慌てて言い直した。

 なんのリスクもない子どもなら、母にこんな顔もこんな気遣いもさせなくて済んだのに。

 お腹の子に罪などない。ならば私が悪いのか。生活態度や食べ物が良くなかったのか。

 全部母のせいなわけがない。全部私の責任。何もかも、私が悪い。
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