旅先恋愛~一夜の秘め事~
「暁さんの幸せを邪魔したくないの。でもどうしても好きで、なんで私が一番じゃないのって思うの。彼に愛される人がうらやましくて……自分が醜い嫉妬にかられる気がして怖かった」


「だから離婚を考えたの?」


うなずくと麗が小さく肩を竦めた。


「本当にふたりとも不器用ね。今、私に話した内容をそのまま椿森副社長に伝えればいいのよ。お互いに言葉が足りなさすぎるの。長い付き合いでもないのに、本心をきちんとさらけ出さないから誤解ばかり生じるのよ」


「でも喧嘩して嫌われたくないし、忙しいだろうし」


「必要な喧嘩だってあるでしょ。唯花は一度でも喧嘩したら椿森副社長を嫌いになるの? 仕事より大事なものがときにはあるでしょ? そもそも夫婦なのになんで遠慮するのよ」


諭すように投げかけられる問いかけが、胸の奥に深く刺さる。


「大事にしてもらっていたって言ってたでしょ? 女嫌いの男性が義理だけでそんな真似をすると今も本気で思ってるの?」


麗の言葉がじわりと心の中に染み込んでいく。

同時に暁さんが私に向けてくれた数々の優しさや思いやり、言葉、笑顔……様々な記憶が走馬灯のようによみがえる。
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