旅先恋愛~一夜の秘め事~
自宅マンションに到着し、タクシーを降りてエントランスを抜ける。

エレベーターホールに着いて、やってきたエレベーターに乗り込み、自宅フロアに到着しても暁さんは口を開かなかった。

玄関ドアを開けて室内に入り、彼が施錠する。

鍵の音が響いた途端、堪り兼ねて彼に話しかけた。


「暁さん、あの、本当にごめんなさい」


「……もう、いいよ」


低い声に心が軋む。


……やっぱり怒ってるの? 


それとも呆れてる?


鼓動がドクドクと大きな音を立てる。

彼に促されて靴を脱いで、リビングへと向かう。

私をソファに座らせた彼は、床に膝をついて私をそっと抱きしめた。


「謝るのは俺のほうだ。本当に悪かった」


「違う、私がちゃんと尋ねなかったから……!」


彼が首を横に振る。

そして私の左隣に腰かけ、口を開いた。


「先に、俺の話を聞いてくれるか?」


うなずくと彼は眦を下げた。


「三年前、俺は京都で仕事をしていて大きなミスをしたんだ。そのとき励ましてくれた見ず知らずの女性がいた。その人が俺の“大切な人”だ」


自然と速まる鼓動を抑えるように、胸の前で拳を強く握る。


「俺はその女性をずっと捜していた」


「その人が……好きなの?」


「最初はただ礼を伝えたいと思っていただけだった。事情を知らない彼女はきっと不思議がるだろうけど、それでも言いたかった」


口元を綻ばせた彼の切なげな表情に、胸が苦しくなった。
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