旅先恋愛~一夜の秘め事~
「長い間返せなくて悪かった」


「……暁さん、待って……傘って……」


告げられた事実に混乱する。


「傘の柄に小さく描かれていた、花びらのマークを捜索の手掛かりにしていた」


暁さんの言葉に、ばらばらだった記憶のピースがカチリと合わさった気がした。


脳裏によみがえったのは三年前、友人の結婚式の二次会前に立ち寄った公園での出来事。


ホテルを出て周囲を何気なく見まわした際に、小雨が降り出す中で座り込んでいる男性の姿を目にした。

なぜか気になって、麗や友人にことわって話しかけたのだ。


まさかあのときの男性が暁さんだったの?


細身のスーツ姿の男性という記憶はあったが、小さな顔には長めの前髪がかかっていて、さらにうつむきがちだったため、面立ちはうろ覚えだった。

ただ、落ち込んでいる様子だった男性が会話をしてくれて、段々と明るい声を聞かせてくれて嬉しかった。

傘は半ばお節介というか、無理やり押しつけたようなものだった。

邪魔になっているのではと勢いで渡した後から気になっていたくらいだ。
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