旅先恋愛~一夜の秘め事~
「嘘……そんな、だって」


「あのとき、唯花は俺を救ってくれた」


「救うって、私はなにもしていないわ」


焦って答えると、彼は小さく首を横に振り、説明を続ける。


「唯花は人生で初めての挫折を味わい、驕った態度の俺に足りないものを気づかせてくれたんだ。空っぽで無機質だった俺の心に温かな感情と目標を与えてくれた」


「買いかぶり過ぎよ……あの夜、私が話したのは自分の趣味だけだわ」


「お前はなんの見返りも求めず俺に親切にして、心配してくれた。純粋に手を差し伸べてくれた唯花の温かさと真っ直ぐな心に惹かれた」


外見や背景しか見ずに寄って来る女ばかりだったから、と苦々しい表情で付け加える。

私を捜し始めて一年が過ぎ、京都や関西在住でない可能性を視野に入れたという。

結婚式に出席するのは地元の人だけではない。

捜索範囲を全国に広げたが、規模が大きいわりに手掛かりは少なく事態は一向に好転しなかったらしい。

唯一の手掛かりは私が残した、花びらのマークだったそうだ。


「ただ捜すだけではなく、唯花からも気づいて、関心をもってもらえるように、携わった施設に花のロゴマークを使用し始めたんだ」


「そんな意味があったなんて……全然気づかなくて、ごめんなさい」


思わず謝ると、彼が首を横に振る。
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