旅先恋愛~一夜の秘め事~
「んっ……」


「……連絡するから、もう逃げるなよ?」


キスの合間に彼が囁く。

目を見張りながらうなずくと、彼は頬に小さなキスを落とした。

暁さんの車が去っていくのを見送った後も、激しい動機はおさまらなかった。

自室に入り、着替えと片づけを済ませてひと息つく。

この突然の再会を麗に伝えようとバッグからスマートフォンを取り出す。

仕事中なのか繋がらず、再会した旨を簡潔にメッセージで送った。

暁さんと私の関係はこれからどうなるのだろう。

ひとりになると、途端に様々な考えが暴れだす。

連絡先は知っていても、多忙で確固とした立場のあの人にそう易々と会えるわけではない。

ましてや普段の生活の中で彼との接点はないに等しい。

避けていた頃は都合の良い状態が、今となっては不都合でしかない。

ましてや私たちは恋人、といっていいのかもわからない。

先ほどまでの甘美な時間が一気に暗いものに変わってしまう。

どうしてこんなにすぐに不安に駆られてしまうのだろう。

気持ちを伝えればよかった、と後悔ばかりして進歩のない自分が嫌で仕方なかった。
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