旅先恋愛~一夜の秘め事~
「副社長に接する機会も多い重要な立場なので、選考が難航していたらしい。だが今回やっと副社長も了承されたそうだ。本社で経験が積めるのはいい話だと思うぞ」


よかったな、と人の好い上司は満面の笑みを浮かべる。

降ってわいたような話に理解が追いつかないが、絶対に偶然ではないだろう。

間違いなく暁さんが関わっている気がする。

金曜日になにも聞いていなかったし、彼の意図がわからないが、せめて仕事だけでも前向きにこなしたい。

今までの私ならこんなありえない話には尻込みして逃げていただろう。

不安がないといえば噓になる。

けれど期間限定、しかも業務命令なのだから断れない。

なによりも本社に行けば彼に会える、接点が少しでも持てる。

不純な動機でも、その事実だけが私の心を少し明るく軽くしていた。

その後、慌ただしく引継ぎを済ませ、翌週水曜日から本社に着任する運びとなった。

吉住くんからはたまに本社に顔を出すから頑張れよ、と激励された。
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