大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「すみません。
 私、なんの役にも立っていないお飾りの妻なので、行正さんに邪魔に思われて、始末されるかなって……」

 行正はあの澄んだ美しい瞳で咲子を見つめて言う。

「大丈夫だ、咲子。
 お前は役に立たない邪魔な妻などではない」

「……行正さん」

「そもそもお前はまだ妻じゃない。
 結婚してないから」

「そうでしたね……」

 殺さなくても、なんの手続きもなく、放り出せる妻っぽいものでしかなかったですね、私、と咲子は気づく。

 いや、まあ、家と家との関係があるので、そんなに簡単には放り出せまいが。

 なんだろう。
 殺されかけた妻の人の方が私よりいい立場だった気がしてきた……。
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