大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 行正さんは……? と見ると、何故か少し満足げだった。

 そのとき、少女たちが言い出した。

「ほんとおねえさまは妖精か、天使か。
 きっと、この世のものではないのですわ」

 箱入り娘で人の良い少女たちの妄想は、かなりの確率で暴走する。

 少女たちの中で、咲子が神格化され。

 咲子は、花の蜜を吸って、朝露で喉を潤している、という話になっていた。

 咲子はそのときにはもう、彼女たちからは離れ、行正の知り合いの紳士と話していたのだが。

 背後でとんでもないことになっている少女たちの夢物語は聞こえていた。

「咲子さまは、きっとお手洗いにも行かれないはずですわっ」

 ――なんだって!?

 実は、さっきからずっと我慢していて、今、まさにお手洗いに行こうとしていた咲子は固まる。

 浅野の屋敷のトイレは、西洋風のトイレで。

 飾られた薔薇の香りに満ち溢れ。

 手洗いの蛇口が金色だったり、女神の彫像が()え置かれていたりして、なかなか素敵なので、ちょっと行くのを楽しみにしていたのだが……。
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