大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 庭にいるみんなからは死角になっている場所で、ルイスと文子が揉めていた。

 文子はルイスにつかまれた手をふりほどこうとしている。

「……なんだ、あれは」

「もしや、ルイス先生は文子さんを連れて逃げようとしているのではないですか?」

「あの二人は恋仲だったのか?」

 行正は何故かそのことに激しい衝撃を受けているようだった。

「……はあ、そのような感じに見えますが。
 でも、文子さんに、そのような兆候は今までなかったんですけどね。

 この結婚への愚痴も私と美世……」

 言いかけて、咲子は踏みとどまる。

 おっと危ない。
 行正さんに向かって、文子さんは、私や美世子さんの結婚生活を聞いていたせいで。

 結婚というものに不安と不満を抱いてたみたいですけど、とか、と言うとこでした。

「あの、もしかして、ルイス先生が一方的に文子さんを好きだったんですかね?」

 そう首をかしげる咲子の横で、行正が、そんな莫迦なっ、と声を上げる。
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