大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 


 あの日、車を止めてやり、祠に向かって歩きながら、行正は咲子に訊いた。

「……祠に毎日なにを祈ってるんだ?」

 は、話しかけたぞ、ついに。

 自分から確認事項でないことをっ。

 だが、訊くのが怖くもあった。

 この結婚が破談になりますように、と祈っているのではないかと思ったからだ。

 だが、咲子は、
「え?
 家内安全、健康第一です」
と答えてくる。

 ……よかった、違った、とホッとする行正の目に、ぽわっとした顔で、四字熟語を唱えてくる咲子が映り、らしくもなく、笑ってしまった。

 えっ? という顔で咲子に見られ。

 恥ずかしくなった行正は、笑ったことをなかったことにするように、厳しい顔で言った。

「ほら、さっさと歩け」
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