大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「まあ、母が用意してくれているだろう」

 そう言う行正はなにやら少し元気がなかった。

 咲子は行正の横顔をじっと見つめてみた。

 行正の心の声が聞こえてくる。

 ――いるのか、女中。
 贅沢な女だな。

 いやいやいや、普通の中流家庭でも、女中さんいますよっ。

 まだ家電が高価であまり普及していなかったので。

 何処の家でも、女中がいなければ、家事をこなすことは困難だった。

「……奥の方も見たいか」

 行正は威圧的にそう訊いてくる。

「み、見たいです」

 まだ玄関しか見てないですよ。

 このまま帰ったのでは、なにしに来たのかわからないではないですかっ。
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