大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 お義母さまに、職人さんが精魂込めて作ってくれている箪笥を置くのにふさわしい部屋を見つけてきなさいと言われていますっ、
と咲子が身を乗り出すと、行正は何故か一歩下がった。

 やはり、私は行正さんに嫌われているようだ、と咲子は暗澹(あんたん)たる気持ちになる。

 結婚前からこんな調子とか。
 いくら、家や上官さまに決められた結婚とはいえ、寂しすぎますっ、
と思ったとき、溜息をついて、行正が言った。

「仕方ないな。
 見せてやろう」

 ……今、行正さんの心の声、聞きたくないな~。

 咲子は、うっかり行正の心の声が流れ込んでこないよう、歩き出す行正から、微妙に距離をとりつつ、ついて行った。



< 31 / 256 >

この作品をシェア

pagetop