大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
帰りも馬車のような車が迎えに来た。
すっと自然に行正が手を貸してくれて、ちょっと高さのあるその車に乗る。
だが、足を滑らせて咲子は落ちかけた。
おっとーっ、と自分でなんとか踏みとどまったのだが、誰かが自分を抱き止めてくれていた。
行正だ。
この人、男の人なのに、なんかいい香りが……。
っていうか、顔が近い、顔が近い、顔が近いっ。
夫ではなく、カラクリ蝋人形だと思おうとしてるのにっ。
こんなに間近で見てしまったら、生きた人間にしか見えないではないですかっ。
咲子は、
「あ、ありがとうございますっ」
と言って、慌てて離れた。
行正は、
「共に暮らす日も近い。
式はしないが、親族への軽いお披露目はある。
怪我などしないように」
と低い声で言う。