大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 


 また沈黙の時間か~と思いながら、咲子が外を眺めていると、あの祠が目に入った。

「あ」
と咲子が声を上げると、行正が、

「どうした?」
と訊いてくる。

「いえ、いつも拝んでいる祠が目に入ったので」
と笑うと、行正は運転手に車を止めるように言う。

「降りろ」
「えっ?」

「せっかく通りかかったんだから、拝んで行け」

 そ、そうですか。
 では、遠慮なく。

 妙なところで気の利く人だな、と思いながら、咲子はまた行正に手を借り、車を降りた。

 まだまだ珍しい車の周りに、近くで遊んでいた子どもたちが寄ってくる。
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