大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 ぐるぐる回って眺めたり、小さな子がぺたぺた触ったりしはじめたが、行正は特に注意するでもなく、それを見ていた。

 赤子を抱えていた子守の女がそれに気づいて、慌ててやってくる。

「すみませんっ」
と彼女は必死に頭を下げて謝ってきたが。

 行正は、
「いや、別にいい」
と言って、咲子に祠のところまで行くように言う。

「……祠に毎日なにを祈ってるんだ?」

 唐突に行正がそんなことを訊いてきた。

「え?
 家内安全、健康第一です」

 そう四字熟語で祈っている。

 そんな祈り方が正しいかはわからないが、と思ったとき、行正が小さく笑った。

 えっ?
 今、笑いましたっ?

 なんか今、ものすごく美しいものを見てしまいましたよっ、と思いながらも。

 あの行正が笑ったことが信じられずに、咲子はその場に棒立ちになる。
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