青い星を君に捧げる【零】
男は急に立ち上がって背中を向けた。ちょっと土とかで汚れてしまっているけれど白い特攻服に金字で“白虎11代目総長 月橘(ゲッキツ)”と書かれていた。


「さっき見えなかったやつ……」


「白虎は本郷家と仲がいいんです。ね!証明になるでしょう!?」


白虎を本郷家が支援しているのは知っている。そしてこの男の子は当主様と面会済みなので信頼にできる、のかな。


「じゃあさっきの会話はなんなの」


男はやれやれとため息を吐いた。


「簡単に言えばスパイってやつですかね。本郷の敵として強大になりつつある組織に入って情報を得るためです。当主直々の命令でした。だけどこのことを知っているのは本郷家当主様と俺だけです」

彼は特攻服を脱ぐとベッドに雑に置く。

「極秘のことなので誰にも迷惑をかけずに終えるはずでした」


君に見つかるまではね、とふわりと笑った。

本郷家の人間として私も知らないこと。あの方ならやりかねないと思った。


「……あなたを信じるよ」


私も彼に向かって微笑んだ。この年齢だけど伊達に裏社会の人たちを見てきたわけじゃない。嫌いだけど、不本意だけどこの人は信じていいよって勘が言ってる。


だって助けてくれたから。
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