青い星を君に捧げる【零】
彼は地面においていたヘルメットを片脇に収めて私に手を差し伸べる。手をとって立ち上がれば、浴衣は無様にも汚れている様子が目に入った。

「……家に帰りたくない」


「そっか。じゃあ、そうだなぁ」


考えるように夜空を仰いだ佑真は私の背中に手を添えてバイクのそばへ連れて行った。


「俺の家に行こうか?浴衣じゃバイク乗れないだろうし歩くことになるけど……」


「うん」

彼は着ていた黒革のジャケットを肩にかけてくれた。


「じゃあ、波瑠も聞きたいことがあるだろうし、ゆっくり行こうか」

ゆっくりと私のペースに合わせてバイクを押して歩く佑真。自動車やトラックが通り過ぎる音の中で、夏の虫たちが奏でる曲が心地よかった。


「……もう会うなって、当主様に言われたの」


私が話を切り出すのを待っていた彼は「そっか」と少し雲に隠れた月を眺めながら言った。


「でも私、もう決めた。言いなりになる自分はもう捨てる」


「強くなったんだね」


彼の付けているピアスが風に揺れる。隣を歩けることが、こんなにも幸せなんて思わなかった。それは物理的にもそうだけれど、気持ちの面でも。


この先もずっと、一緒にいてほしい。立場も何もかも捨て去って、二人だけで何処か遠くへ。
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