恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 玄関へ向かうと、彼が歩の二倍はありそうな大きなくまのぬいぐるみを持っていてビックリした。
「おかえりなさい……って、そのぬいぐるみは?」
 目を丸くして驚いている私に、一条くんは嬉しそうに言う。
「歩くんの寝室、なにもないからつい買ってしまった」
「図鑑も買ってくれたのにいいの?」
「だから、ワインに比べたら全然安い。それに、歩くんが喜ぶ顔が見たいんだ。熱は?」
 彼は私に尋ねると同時に自分の額を私の額にコツンと当ててきた。
「どうやら下がったみたいだな」
 私の目を見て彼が少し安心した顔をする。
 だが、こんな風に不意打ちで彼に触れられた私はたまったものではない。
 心臓がバクバクして呼吸不全になりそう。
「美鈴、顔真っ赤だよ。やっぱりまだ熱があるのかな」
 真顔でそんな指摘をするが、熱が理由で私が赤くなったのではないと一条くんは知っているはず。
「一条くんのせいです」
 上目遣いに彼を睨んではっきり否定したら、彼が形だけの謝罪をする。

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