恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 日本海を見下ろす高台に佇む木造三階建ての老舗旅館。一条くんの話では多くの文豪に愛された宿らしい。
 ピカピカに磨き上げられた廊下を歩くとキュッと木がきしむ音がするが、それがなんとも趣きがあっていい。
 奥の離れに案内されたが、そこは露天風呂付きだった。部屋も三部屋あって庭もある。
もうこれは一軒の家だよね。
 寝室には見るからに高級そうな大きなベッドがふたつ隙間なく置かれていた。
 貧乏人の私としては宿泊費が気になるところ。
 きっと私の一カ月のお給料よりも高いに違いない。
「あの……い、一条くん、本当にこんなところ泊まっていいの?」
 場違いなところに来てしまっておどおどする私に、彼は平然とした顔で言った。
「俺が勝手に連れて来ただけ。それに……」
「ワインに比べたら安い……でしょ?」
 もう口癖になっている一条くんの言葉を口にすると、彼がしたり顔で笑った。
「わかってるじゃないか。大事なのは歩がすごく喜んでるってこと」
 
< 123 / 256 >

この作品をシェア

pagetop