恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 そう思いつつも彼の唇が離れると寂しいと思う自分がいて……。
「もっとキスして欲しいって顔してる」
 絢斗に図星を指されてギクッとした私は慌ててベッドから起き上がり、彼の顔を見ずに「部屋の露天風呂に入ってくる」と告げて、浴室に向かう。
 ああ~、歩だって寝てたのになにをやってるの私。
 しっかりしろ。自分の立場を忘れるな。
 彼は大企業の御曹司で私は子持ちの貧乏OL。
 身分違いもいいとこ。好きになってはいけない。
 そう自分に言い聞かせながら脱衣所で浴衣を脱いで浴場へ行く。
 ヒノキのお風呂でここからも海が望めた。
 軽く身体を洗って、湯船に入る。
 外は寒いけれど、お風呂は温かい。
 静かな波の音。
「今日一日で一生分の贅沢をしたかも」
 ポツリと呟いて、空に浮かぶ月を眺める。
 小さい頃は、おとぎ話を読んで、自分にもいつか王子様が現れてお姫様になるんだって思ってた。
 現実逃避することで、辛い日々を乗り切ろうとしたのだ。
 
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