恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 その夢さえも見なくなったのはいつからだろう。
 歩を養子にした日からかもしれない。
 弟が無事に育ってくれればもうなに望まない。
 弟が成人したら、明るいおひとり様生活でも考えよう。
 花を育てるとか、読書しまくるとか、今できないことをたくさんするの。
 お洒落もいいかもね。
 髪の色を変えるとか、パーマかけるとか……。
 年一回しか美容院に行かないから、お金があったらやってみたいなって……。
 そんな些細な幸せでいい。それが私の身の丈に合った幸せ。
 誰かと恋をして結婚なんて夢は見るな。
 今は歩が笑ってくれれば……それで……い……い。
 お腹がいっぱいだったせいかうとうとしてしまう。
 突然ブクブクという音がしたかと思ったら、口の中にお湯が入ってきた。
 お、溺れる⁉
 びっくりして湯船の中でひとりバシャバシャ暴れていたら、浴場の扉が開いて絢斗が現れた。
「美鈴!」
 彼が駆け寄って私を半ば湯船の中で溺れていた私を抱き起こす。
 ゲホッゲホッとむせる私の背中を彼がさすった。
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