処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
「なんだこれ?」

「カボチャに人参にタマネギ。あとジャガイモだよ」

「なんだよ野菜じゃねーかー」

「おやつじゃないのかよー」


籠を覗いたみんなはがっかりする。

「こらこら。食べてから文句をいってよ? 絶対おいしいから」

「こんな薄く切った野菜を食って、本当に美味いのかよ」


不満げに1枚カボチャをとり、パリッと噛んだ男の子はしばらく味わった後何度が瞬きをすると、ハムスターのようにパリパリパリと口に入れていき、すぐに次のタマネギを手に取った。


「なんだこれ、うまー」


一人が喜ぶと、次々と他の人達の手ものびる。
カウルはジャガイモを手に取り、パリンと音を立てた。


「これジャガイモなのか? こんなの初めて食べたぞ」

「んふふふふふ。そうです! ポテトチップスって言います!」

「なんだこれ。食べる手が止まらない!」


喜んでいるみんなを「そうでしょうそうでしょう」と見回した。
この大量の野菜をスライスするのに、わたしは右腕を筋肉痛になるほど働かせましたからね!


正直、この世界の野菜の品質はあまり良い物ではない。
辛みが強く、火を通しても食感が悪いタマネギ。
青くささが強く、芯がのこってしまっているにんじん。
甘みがなくて水っぽいカボチャ。
そのまま料理に使っても、中々美味しく変身してくれない。

だからわたしは、それらを全部揚げてしまうことにしたのだ。
使いにくい食材を消費できるし、余分な経費は掛からないし一石二鳥だ。
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