お嬢様は完璧執事と恋したい

 この想いを知ってもらうために、隙を見つけては朝人に自分の想いをほのめかしている。

 けれど彼は十二歳も離れていて、しかも執事と主の娘という関係だ。澪は恋愛対象にならない――言語道断だとでも言わんばかりに、この恋心に蓋をする。直接想いを伝える素振りを見せようものなら、サッと先回りして澪に決定打を打たせないように回避されるのだ。

 それでも諦められない。子供扱いされて、まるで相手にされていないことなど最初からわかっているけれど、他の人なんて見えない。視界に入ったとしても記憶に残らないぐらい、澪の頭の中は朝人でいっぱいなのだ。

 この気持ちを抱えたまま父の薦める人と結婚したところで、誰も幸せにならないことはわかっているのに。

(あ、スマホも財布も置いてきちゃった……)

 一階に到着したエレベーターから飛び降り、マンションのエントランスから外に出たところで、自分が身一つで出てきてしまったことに気が付いた。

 父に呼び出されたときは外に出ることを想定していなかったので、充電器に挿しっぱなしのスマートフォンもバッグに入ったままの財布も持ってきていない。
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