お嬢様は完璧執事と恋したい
「何するの! やめ……んむっ!」
恐怖を感じてイヤイヤと抵抗すると、口を押えていた男の左手が一瞬だけ外れた。その隙に拒絶の意思を示したが、またすぐに左手で口を塞がれる。
「おい、さっさとしろ! 早く連れてこい!」
「わかってる……ほら、歩けっ」
偶然にも人通りが少なく、停めてあったワンボックスカーまでの距離もほとんどないに等しい。油断していた澪が車内に引きずり込まれるまでの時間は、ほんの一分にも満たなかった。
「うっ……いっ、たぁ!」
あれよあれよという間に見知らぬ男たちに捕らえられた澪は、座面シートを外して広い空間になった後部座席に、突き飛ばされるように転がった。
中で待っていたもう一人の不審者が素早く澪の口をガムテープで塞ぎ、手首同士を前に重ねた状態で拘束する。さらに足首同士もぐるぐる巻きに縛りあげられてしまう。
(ええぇぇ!? 嘘でしょ!?)
澪をワンボックスカーに押し込んで扉を閉めた大男は、運転席に回り込むとその勢いのまま車を発進させる。走り出した車内に転がった澪は、ようやく自分が『誘拐された』ということを理解した。