貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私を挟んで、向こうにいる主任に噛み付くようにふう君は言うが、主任は平然とそれを聞いている。

「そう言っても、怜さんの承諾はもらっている」

それを聞くとふう君はお父さんのほうを向くと「親父! 何考えてんだ!」と声を荒げた。

「考えるも何も、これは決まったことだ」

さも当たり前と言わんばかりのお父さんを睨みつけるように顔を顰めると、ふう君はまた婚姻届に視線を落とした。

「社長も噛んでるな。だから兄貴は俺を送り込んだんだろ。創一さんも、どういうつもりだよ?」

ふう君は、今度は主任を見てそう言う。けれど、私にはその言葉の意味が理解できなかった。

社長? って誰のこと?

そう思っていると、主任は口を開く。

「勿論うちの父も承知の上だ。悪いが、お前や一矢がなんと言おうがこれは変えられない」
「俺は認めないからな! 将来の旭河本社社長夫人なんて、与織が苦労するのは目に見えてるだろ!」

目の前で、ふう君は拳を握りしめてそう絞り出した。

そして私は、自分が実は思っていた以上に大変なことに巻き込まれていたことにようやく気づいた。

将来の……旭河本社……社長夫人?

そう言えば入社式の日。本社の代理の人が読み上げていた祝辞。

社長の名前は……そう。川村新……だった。
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