貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
入社して2回目の月初は思いの外忙しい。朝にはまだ少なかった問い合わせの電話やメールは時間が経つにつれ増えて行き、そうしているうち届けられた郵便物を開封して、としているうちに昼になった。もちろん今日は清田さんも出勤しているから、2人でお弁当を囲んでいる。

「与織子ちゃんは連休どこかへ行ったの?」
「……いえ、特に遠出は……」

出社した人の中にはお土産を持ってきている人もいた。中には海外旅行、なんて人もいるなか、どこにも行っていない私はお土産を受け取るばかりだった。

「私もこのお腹でしょ? 長時間座ってるのも苦しくて結局近所で買い物したくらいなのよ」
「もう1ヵ月後には産休に入るんですよね。寂しいです」

私はお箸を持つ手を止めしんみりてしてしまう。こうやっておしゃべりしながらお弁当を食べるのもあと少しだ。

「そうね。私も寂しいな。何かあればいつでも相談してね?」

そう言って微笑む清田さんは、すでにお母さんのような雰囲気を醸し出している。

「はい。ありがとうございます」

私はそう答えてからまたご飯を口に運び始めた。

「それにしても与織子ちゃん。水臭いな?」

私がせっせとお弁当を食べていると、清田さんはニコニコしながらそう言った。

「え? 何かありました?」

そんなことを言われる心当たりがなくて、ポカンとしたまま清田さんに尋ねる。

「川村君と、いつの間に付き合い始めたの?」
「んんっ!!」

危うく喉にご飯を詰まらせそうになり、慌てて水筒のお茶を流し込んでから、私ははぁっと息を吐いた。

「なっ、なんで⁈ いったいどれを見てたんですか⁈」

狼狽えながら尋ねると、清田さんは穏やかな顔のまま笑っている。

「あらあら。どれって言うくらいお休みの間デートしてたのね? どうりで金曜日、川村君の機嫌がいいと思った」

清田さんにそんなことを言われ、私はその場で固まっていた。

「どっ、どうか、この話はご内密に!」

我に返り清田さんにお願いすると、「わかってる。誰にも言ってないわよ?」とニコニコした笑顔が返ってきた。
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