貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
こんな素敵なお店に仕事で行くなんて、さすが本社勤めは違うなぁ……とポカンと口を開けてしまう。私が仕事で行くことなんて、おそらくないだろう。

「そうか……。ここもいいかもな」

またテレビに視線を戻した私の耳に、いっちゃんの呟きが届く。

「どうかしたの?」

今度はワイシャツのボタンを外しにかかっているいっちゃんのほうに顔だけ向けて尋ねる。

「いや?……じゃ、先に風呂入るな?与織子はあとでいいか?」

そう言っていっちゃんは立ち上がる。

「うん。これ見終わってからにする。ご飯食べるでしょ?どれにする?」

もちろんいっちゃんのご飯も鶴さん特製だ。

「今日はあれだ。俺専用のやつ!」

いっちゃんは子どもみたいにニカッと笑うと踵を返す。

「晩酌付き合ってくれよ?」
「いっちゃん、おじさんみたいだよ?」

そう言う私に笑いながら、「おじさんじゃない。お父さんだ」と答えて、いっちゃんは消えていった。
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